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小説『古都』~北山杉と女性たち~

北山杉と古都の風景が織りなす物語、『古都』

京都の呉服屋の娘、千重子。
北山杉の村で働く娘、苗子。
別々の人生を歩んできた姉妹は、祇園祭の夜に出会う・・・

川端康成 著。幾度も映画化、ドラマ化された小説の舞台が、ここ北山にあります。

―今は市に合併されて、北区中川北山町だが、百二三十戸だから、村という方が、ふさわしいようだ。 「うちはいつも歩くさかい、歩いて。」と、千重子は言った。「こないええ道やし。」 清滝川の岸に、急な山が迫って来る。やがて美しい杉林がながめられる。じつに真直ぐにそろって立った杉で、人の心こめた手入れが、一目でわかる。銘木の北山丸太は、この村でしか出来ない。

「北山杉」

じつに真直ぐな幹の木末に、少し円く残した杉葉を、千重子は「冬の花」と思うと、ほんとうに冬の花である。 たいていの家は、軒端と二階とに、皮をむき、洗いみがきあげた、杉丸太を、一列にならべて、ほしている。その白い丸太を、きちょうめんに、根もとをととのえて、ならべ立てている。それだけでも、美しい。どのような壁よりも、美しいかもしれない。

「冬の花」

川端康成『古都』より

 主人公の一人、苗子は、北山杉を生産する村の娘、という設定です。二人の主人公の揺れ動く心の描写の背景には、京都の街と北山杉があります。名シーンは、北山杉の木立の中で二人が突然の雨に降られる場面。他にも、映画やドラマには随所に北山の風景が登場します。

『古都』ゆかりの地

映画やドラマのロケ地となった場所、記念碑など「古都」にまつわるスポットをご紹介します。
ぜひ一度訪れてみてください。

撮影スポット倉庫群
撮影スポット倉庫群
撮影スポットその他
撮影スポットその他
姉妹の銅像
姉妹の銅像
「古都抄」歌碑
「古都抄」歌碑

映像化された『古都』

映画『古都』
昭和38年 松竹京都
出演:岩下志麻、長門裕之、吉田輝雄
昭和55年 東宝・ホリ企画
出演:山口百恵、三浦友和、岸恵子
テレビ『古都』
昭和39年 NHK
出演:小林千登勢、津川雅彦、花ノ本寿
昭和41年 フジテレビ
出演:長内美那子、吉田輝雄、小坂一也
昭和55年 TBS テレビ
出演:岡江久美子、志垣太郎、河原崎健三
昭和63年 関西テレビ
出演:沢口靖子、村上弘明、堤大二郎
平成 6年 テレビ東京
出演:中江友里、橋爪功、杉本哲太
平成17年 テレビ朝日
出演:上戸彩、小栗旬、渡部篤郎

北山杉と女性たち

 小説の中にも登場する、北山杉の村ではたらく女性たち。北山では昔から、男性は伐採や枝打ち、女性は育林作業や伐採後の皮むき・磨き等の加工、運搬の仕事を担っていました。主人公・苗子もその一人です。砂で丸太を磨くのは、寒さ厳しい冬の時期。薪で沸かしたお湯で手を温めながら、女性たちの手によって丸太は仕上げのお化粧を施されるのです。

 交通網が発達する昭和10 年頃までは、京都の街の材木店などに丸太を運んでいくのも、女性の仕事でした。垂木なら4~5 本、床柱なら1~2 本の丸太を頭に載せ、山道を徒歩で下り、食料や生活用品と交換しに一日2 往復したのです。重たい丸太を載せて下を向かずに山道を下るのは高度な技でした。繊細な北山林業は、助け合う男女の手により支えられ てきました。

「こむき」作業をする女性たち
「こむき」作業をする女性たち
丸太を運ぶ女性たち
丸太を運ぶ女性たち

女性たちのファッション

北山女性の仕事着姿
北山女性の仕事着姿

北山の女性たちの仕事着は、
・裾除け(すそよけ) ・半纏(はんてん)
・三幅前掛け(みはばまえかけ) ・たちかけ
の4点セット。

着る順番

※各写真はクリックで拡大されます。

①裾除け(すそよけ)・半纏(はんてん)を着ます。

はんてん

②半纏(はんてん)の上から三幅前掛け(みはばまえかけ)を腰に巻きます。

三幅前掛け

③たちかけは、前部→後部の順に着ます。

たちかけ

④装着完了。横から見た写真です。

横から見た写真

そして頭には思い思いの柄の手ぬぐいを姉さん被りします。
集落によっても微妙に異なるファッションがあったそうです。

ブログで詳しくご紹介しています。

作業着の女性たち

現代のようなトイレのない時代、また仕事場に山林が含まれるという過酷な状況において、動きやすい、用を足しやすいといった機能面から、女性たちにとってこの"たちかけ姿"は非常に実用的な作業着であったのでしょう。

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